旬感食材

毎月2回、旬の食材を取り上げて
ちょこっとしたうんちくをご紹介。

●第8回 柿と祖父との思い出

柿明治生まれの祖父は亡くなる直前までも晩酌を欠かしませんでした。いやいや家で飲むだけでなく現役時代は外でも随分飲んでいました。そんな時は家に帰ってきてからも「もう一杯」と母にウィスキーの水割りを作らせます。
嫁である母はもちろんそのリクエストに応えますが、それが2杯、3杯になって結局深夜にまで及ぶことが多々ありました。
その間、母はずっと祖父の横に控えていました。
一方、祖父の妻である祖母はと言うと寝室で一人狸寝入りを決め込んでいたようです。最近母はそうした話を少し懐かしそうにするようになりました。祖父母はもちろん随分以前に、そして父も昨年末に他界したことから、母の中では「嫁・姑バトル」はもう昭和の時代の遺産となっているようです。



柿断面さて、そんな祖父は大いに「柿」を嫌っていたことをボクはよく覚えています。いや「柿」そのものは決して嫌いではなく、夕食後に出されるデザートしての柿を嫌っていたのです。その訳は「酒がまずくなる」と言うことでした。いやはやあれだけ飲んでおいてよく言うなと思うのですが、管理栄養士の徳田泰子先生はこう言います。
「柿には利尿作用があって、身体を冷やす作用があるからです」と。
なるほど!祖父は折角アルコールで温まった身体を冷やしてしまうのを嫌ったのでしょう。しかし、実はそれだけではなさそうです。
柿には果物でもトップクラスのビタミンCが含まれています。このビタミンCと、柿の渋みの成分であるタンニンは、血液中のアルコール分を体外に出してくれる作用があるのです。
これを祖父は嫌ったのでしょう。

しかしまぁ酒飲みとは何とも意地汚いと言うか浅ましいと言うか。わざわざアルコール分を体内に取り入れたのだから、ちょっとやそっとじゃ体外には出さないぞと言うわけなのでしょうか。それも多分理屈ではなく、長年の飲酒習慣で身をもって知っていたのでしょうから恐れ入ります。とは言うものの、祖父は何やかや言いながらもその柿は食べていました。
いえ、母が出す物はいつも最後まで全て残さず食べていたように思います。

そして最後に「ご馳走様」と言っていました。祖父はそう言う明治の人でした。

(By エッセイスト・KUNI61)

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