旬感食材

毎月2回、旬の食材を取り上げて
ちょこっとしたうんちくをご紹介。

●第29回 「柚子の阿呆は」

今年も大きな黄色い実をつけた。
ゆずの木

毎年、出来、不出来はあるものの、この季節に健気に実をつけるのは我が家の柚子の木である。

特に今年は刺のある枝が邪魔だと言って、随分剪定したにも
かかわらず、泣き言も恨み言も言わずに実をつけてくれた。
ごめんよ。痛かったかい。

朝夕の気温が下がるごとに柚子の黄色は濃くなっていく。
本当に健気である。

この木は祖父が植えたもの。

祖父が亡くなったのはボクが社会に出て1年目か2年目の冬。
もう25年ほど前のこと。
もちろん、この木を植えたのは、さらに前のことだろう。
祖父はよくこんな戯言を言っていた。


ゆずの木アップ「桃栗三年、柿八年。柚子の阿呆は十三年」柚子が実をつけるのには随分時間かかることを嘆いたものだ。
となると、この木はいつ植えられたものなのか。

この地に引っ越してきたのはもう47年前。

その頃からある木なのか。
トンと記憶にない。
しかし、この戯言は祖父の専売特許ではないらしい。

既に江戸時代の書物には
「桃栗三年、柿八年。柚子は九年になりかかる」とあると言う。
その他「柚子は遅くて十三年」「柚子は大馬鹿十八年」と言うのもあるそうだ。

「阿呆」とか「大馬鹿」とかそれでは柚子があまりに可哀想である。

管理栄養士の徳田泰子先生はこう援護する。
ゆず
「柚子はビタミンCが豊富で、風邪予防に適しています。 また柚子の香りには神経の興奮を抑える癒しの効果、さらに肝臓強壮など健康効果も期待されているのです」とのこと。

柚子を馬鹿にしちゃいけないのだ。
いやいや、そもそもこのフレーズは柚子を馬鹿にしたものではないらしい。
小説「二十四の瞳」で知られる作家の壺井栄は、色紙にサインを求められると「桃栗三年、柿八年、柚子の大馬鹿十八年」という言葉を好んで書いていたそうだ。

その意味は何事も成就するにそれ相応の時間がかかる、辛抱強く年月を重ねれば必ず実を結ぶものだ、と言うことらしい。ボクも齢五十を過ぎた。

さて、お前も何某かの実を結べたのか、と言う祖父の声が聞こえてくる。
大丈夫!阿呆でも大馬鹿でも必ず実を結ぶのだから。
いつかは、きっといつかは。(ByエッセイシストKUNI61)

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