旬感食材

毎月2回、旬の食材を取り上げて
ちょこっとしたうんちくをご紹介。

●第38回 「甘く酸っぱくほろ苦く」

グレープフルーツ

少し恥ずかしい思い出。

そっと届けられたメモには鉛筆でこう書いてありました。
「私もあなたのことが好きでした」 と。
ポッ!
確か、高校2年生の夏。ボクも彼女のことを中学生の頃から憧れていました。 陸上部で、スレンダーで、賢くて、可愛くて。

あぁ、でも、ボクは何を思ったのか、そのメモを1年もの間握りつぶしていたのです。
何を思ったか・・・と書きましたが、実は明確に理由がありました。
「私もあなたのことが好きでした」、
さてこの文章を貴方は「過去形」と捉えるのか「現在完了」と捉えるのか、これは大きな違いですぞ!

グレープフルーツ(半分)

多分です、このへんはもう記憶が薄れているのですが、ボクが先に彼女にメモを渡したと思うのです。 「ボクは君が好きです」と。
その答えが「私もあなたのことが好きでした」。
これ、どう考えても相思相愛ですよね。
しかし、ボクはどう間違ったのか、これを過去形と捉えたのです。
彼女は一時期ボクのことを好きだったのだが、今は違うと。

その誤解が解けたのは、高校卒業間近。彼女はこう言いました。
「あのメモの何がいけなかったの?」と。
あぁ、君は悪くないのだ。全てボクが悪いのだ。

甘く、酸っぱく、ほろ苦い思い出。
そうまさに、グレープフルーツの味だったのです。

グレープフルーツ(2種)

この季節、グレープフルーツを輪切りにしてスプーンを突き立てるたび、あの高校時代の焼けたグラウンドを思い出すのであります。
しかし、グレープフルーツ自体は優しい。

管理栄養士の徳田泰子先生はこう解説します。
「ビタミンCが豊富で、夏場のシミ・ソバカス対策には大切な働きをします。また、紫外線によって肌コラーゲンが壊れやすい時期ですので、このグレープフルーツによりビタミンCを補うことでコラーゲンの吸収もよくなります。さらにビタミンB1も含むので疲れやすいこの時季に進んで取り入れて下さい」とのこと。
グレープフルーツは、やっぱりいい奴なのであります。

しかし、ボクはこの失敗を機に、国語の勉強をして、文章を書く練習も一生懸命したことから、多分今のボクがあると思う。 けれど、あれほど切ない一文には、あれから出会ったことはないなぁ。

若い時代は甘く酸っぱく、そしてほろ苦いグレープフルーツのような季節なのでありますね。


(ByエッセイシストKUNI61)

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