旬感食材

毎月1回、旬の食材を取り上げて
ちょこっとしたうんちくをご紹介。

●第42回 「永遠のこども」

巻き寿司

ボクには80歳になる母がいる。
母は腎不全で週3日透析を受けると言う生活を
実に27年にわたって続けている。
ここ最近は、病院まで出来るだけボクが車で送るようにしている。
しかし、その車の乗り降りも随分辛そうになってきた。

そんな年老いた母だが、料理は自分で作る。 気が向けば「あんたたち家族の分だ」と言ってお裾分けをしてくれる。
そのお裾分けのメニューの中で、「これはあんただけに」と言うものがある。
それは“巻き寿司”だ。

巻き寿司

母は、毎度毎度言う。
「こっちが椎茸の入っている分。
そして、こっちが椎茸の入っていない分。これがあんたの分ね」と。

母が巻き寿司を2種類作るのは訳がある。
ボクは椎茸が嫌いなのだ。
どうしても、あの見た目が駄目なのだ。
小学校の給食の時から駄目だった。
中華スープの中に泳ぐ椎茸。駄目だ。
目をつむり、鼻を摘まんで飲み込んだ。
それ以降もこの椎茸だけは駄目なのである。
母はいつからか息子にこの椎茸を食べさすことを諦め、巻き寿司は他の家族用の椎茸入りと、ボク専用の椎茸無しの二種類を作ってくれるようになった。
そしてこれも毎度毎度言う。「椎茸は美味しいのよ。それに栄養価も高いのに」と。
実際そうらしい。

管理栄養士の徳田泰子先生はこうコメントする。
「まずカルシウムの吸収をよくするビタミンDが豊富。それからエリタデニンと言う椎茸特有の成分があって、これは血中コレステロールを下げて動脈硬化を防ぐ働きがあると言われています。さらにエルゴステロール。これもカルシウムの吸収を高めて骨を丈夫にします。さらにβグルカンを含み、これは免疫機能を高めると言われています。ええとこ、ばっかりですね」とのこと。

ボクだってそれぐらいは薄々知っていた。
だから、随分大人になった今は、椎茸を食べる。
焼き椎茸は美味いと思う。
茶碗蒸しに入っている椎茸も、茶碗からコソッと出して無かったものになど、もうしない。
多分、巻き寿司の椎茸だって、かつてほど毛嫌いしないとは思う。
しかし、母はきっと引き続き椎茸抜き巻き寿司をボクのために作ってくるだろう。
そして、母は毎度毎度言うのだ。
「手間なんだから」と。

ボクは母にとっては永遠の子どもなのである。

(ByエッセイシストKUNI61)

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